認知症を早くみつける!東大生のブログ

認知症の早期診断・早期対応政策を、地方自治体職員の方や議員の方に提案しております。その他、市民団体・認知症関連団体・企業の方と協働して、認知症啓発活動にも取り組んでいます。政策企画やマニフェスト作成、議会質問、各種啓発活動のご相談はお気軽にinfo@policym.orgまで。NPO法人政策会議が活動母体です。

「学生ロビイング」が政治を変える! ~東大認知症政策チームが活動する理由~

「なぜロビイングをしているんだろう?」
「なんで学生がやっているんだろう?」

私たちの活動ブログをご覧になる方のなかには、そもそもこのような疑問を抱かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
現代の日本の政治において、ロビイングという行為が持つ意味とは何なのか。
それに大学生が取り組む意義とは何なのか。
今回は、私たち東大認知症政策チームの活動背景についてお話しようと思います。

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 私たちが認知症というテーマに注目するのとはまた違った理由で、私たちは学生ロビイング(student lobby)という活動に意義を見出しています。学生ロビイングを通して「こういう社会をつくりたい」という理想を実現したいのです。

その理想とは、一言で言えば、「大学を中心としたボトムアップ式問題解決社会の実現」です。 

 

■これからは「問題の現場」から問題解決を

 これまでの日本では、良くも悪くも官僚や議員、内閣などの中央政府のアクターが主導する、トップダウン式の政策形成が主流でした(※)。

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たとえば高度経済成長期のような時代は、日本全体における人々の利害は、「経済成長」という一点においてある程度一致していました。そんな中での政治の役割は、経済成長を促進しつつ、そのネガティブな影響を最小限におさえることでよかったのです。そのような何をすべきかが明確であった時代には、全国でトップダウン式に政策を推進することが、ある程度望ましかったと言ってよいと思います。

しかし、現代のような人口減少・低成長時代では、「経済成長」という万能薬を政策づくりの前提とすることは、もはや難しくなっています。

また地域・世代等を軸に、ますます多くの利害の異なる集団が生まれ、それらが偏在しています。国家のような大きな行政主体は、そうした集団それぞれのニーズを正確に捉えることが困難になりました。したがって、そこから生まれる政策も「それは本当に、その問題を根本的に解決しうるものなのか?」という疑問を抱くようなものが少なくないのです。

■待っているだけでは問題解決にならない。ならば自分で行動しよう

ただ指を加えて見ているだけでは、国は問題を解決してはくれないのです。
あるいは「できない」と言ったほうがよいのかもしれません。しかし、それを悲観することはないのです。

そもそも政治とは、「解決してくれない」というような受け身の姿勢で関わるものではなく、私たちのほうから能動的にはたらきかけ、機能を維持・向上させていくことを必要としているはずです。

待っていてはニーズが吸い上げられないなら、ニーズを提出しに行けばよい
問題の現場にいる人が、問題解決のために考え、行動すればよい

そのための新しいキーワードがロビイング(lobbying)です。
「こういう施策が必要だ!」という政策ニーズを、ボトムアップ式に国や地方自治体に提出し、多様な関係者を巻き込んで政策実行に必要なリソースを取り込んでいき、ついには問題解決のための政策を世に送り出してしまえばよいのです。

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■大学生が、「大学」をフル活用して問題に立ち向かう

ではそのようなロビイングを行っていくには何が必要でしょうか。
「もっと国民の政治参加を!」と呼びかければ、日本の人々全員を動かすような社会的なうねりを起こす事ができるのでしょうか?

私たちは、現実的に、そうは考えていません。そのような啓発的なアプローチを取っている活動家・団体を多く見ますが、私たちにはそのどれもが、着実に目的達成に近づいているようには思えません

ではどうするのか。
全員は一気に動かせない。しかし行動する人はいる。その中には、目的達成にふさわしい環境に恵まれている人もいる。
そうであるならば、まずはそのような限られた人々を組織し、集中的に動員して、ひとつ成功例を作ってしまえばよい。それがやがて世の中の新しいトレンドを生むことになるだろう。

そこで私たちは「大学」という場に注目します。
日本には大学がたくさん、それも各都道府県にまんべんなく存在します。そこに通う学生は、時間もあり、大学教員をはじめとした様々な専門家にも会いやすい身分です(経験上、「大学生です」と名乗り、きちんと背景を説明した上でヒアリングを申し込むと、ほとんどの方が快くお話を聞かせてくださいます)。
そして「こういうことが問題だ」という強い思いを持ち、活動する意欲のある人々が一定数存在することも、私たちは肌感覚で知っています。
そうした人々が知恵をしぼり合い、然るべき方法論のもと試行錯誤を繰り返していけば、「社会を動かす」という一見分不相応な目標にも、必ず届くはずです。

もちろん、「学生だから」という甘えを徹底的に排し、プロフェッショナル同然に取り組むことができれば、という留保付きなのですが。
そしてそのような甘えこそが、学生発のほとんどすべての活動が越えられない壁であるという事実も、私たちは胸に刻んでおかなければなりません。

■小さな成功例を生み出し、社会的なうねりを起こす

問題の現場にいる人々が、政府に対して受け身になることなくみずから考え、解決に向けてアクションを起こす。
そのなかでも大学生が、「大学」という恵まれた環境を存分に活かし、問題解決をリードする。
そうして、まずは「小さくても確実に」世の中がポジティブに変わった例を生み出していく。
このようなことが続いていけば、やがてその活動は各地に伝播して社会的なうねりとなり、まさに「ボトムアップ式問題解決社会」と呼べるような状況が生み出されることでしょう。

このような新しい政治システムたりえるようなトレンドを生み出すことが、私たちが今こうして社会問題に取り組んでいる理由であり、そのためのキーワードが「学生ロビイング」なのです。

(※)政治学上では、官僚・族議員主導の政策決定パターンをボトムアップ型、首相・内閣主導の政策決定パターンをトップダウン型と定義することがありますが、今回の記事の文脈では、これら2つを「中央政府主導の政策決定パターン」と捉えてトップダウンと定義しています。


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私たちは2013年の12月に結成された認知症政策ロビイングチームです。東大生を中心としたメンバー5名で、認知症問題に取り組んでいます。

厚労省の推計では「2025年には認知症の高齢者が700万人になる」と言われています。高齢者の約5人に1人が認知症になるというこの事実からも、認知症というイシューが日本にとって極めて重大であることは疑いようがありません。

一方で、現在、認知症に対する具体的な政策や取り組み状況は各自治体でまちまちであり、決して十分とは言えません。そこに問題意識を持った私たちは、

「ロビイングによって、早期発見を中心とした包括的な認知症政策を、全国レベルで実現すること」

をミッションに掲げて活動しています。

現在は、全国レベルでの認知症政策展開の前段階として、地方自治体・議会への政策提言・政策提携・議会質問サポート等を行っています。
お問い合わせ・ご相談は、NPO法人HPをご覧ください。

 
 

【参考・出典】