認知症を早くみつける!東大生のブログ

認知症の早期診断・早期対応政策を、地方自治体職員の方や議員の方に提案しております。その他、市民団体・認知症関連団体・企業の方と協働して、認知症啓発活動にも取り組んでいます。政策企画やマニフェスト作成、議会質問、各種啓発活動のご相談はお気軽にinfo@policym.orgまで。NPO法人政策会議が活動母体です。

認知症は治せない!? ~認知症の治療について~

「ひとたび発症してしまうと、決して食い止めることのできない、【宿命の病】である」

これまで、そうみなされてきた認知症。現在、医療や介護、その他数多くのアプローチで「認知症大きく効果のある治療法」の研究が進められています。

では、現在の認知症の治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

現時点で、認知症を食い止める方法はないのでしょうか。

今回は、認知症治療の現状についてお伝えしたいと思います。

f:id:dementiaPJ:20140723165507j:plain

  

 

認知症の治療 ~初期段階であれば治療可能~】

認知症を根治する治療方法はないのか?」 

残念ながら、この質問に対する答えは「No」です。現在のところ、認知症の根本的な治療方法は見つかっていません。

 

しかし、今までの実証研究から、脳外科的処置や内科的治療、薬剤投与などによって、初期段階であれば、認知症からの回復もしくは症状進行遅延を行えることが分かっています。

例えば、投薬で言えば、特にアルツハイマー型に対して「塩酸ドネベジル」等の投与することで、平均で10ヶ月脳細胞死を遅らせることが出来るという報告があります。

薬剤研究の先端では、新薬開発と並行して「既存の薬品の効果を活用する」ことに注目が集まっており、脳梗塞薬の再発防止薬「シロスタゾール」や、「鼻からのインスリン噴霧」などを使った方法が研究されています。(※上記二つは、2014年7月23日現在、認知症の治療薬としては認められていません)

f:id:dementiaPJ:20140723170355j:plain

 (出典:NHK健康ホームページ http://www.nhk.or.jp/kenko/n_special/140714.html

 

また、介護の現場では、「人」への哲学に基づき、認知症の方の「人間らしさを取り戻す」ための介護技術として「ユマニチュード」が注目されています。

ユマニチュードは、30年以上前にフランスで開発された、包括的ケアメソッドであり、具体的な技術に基づいた誰でも学ぶことが出来る技術で、「見つめること」「触れること」「話すこと」「寝たきりにしないこと」の4つを重視するのが特徴です。

認知症の方の、行動や心理状況を落ち着かせるのに効果があることが認められています。


『ユマニチュード [DVD] 優しさを伝えるケア技術』 より - YouTube

 

【早期発見の重要性 ~早く見つけて、適切な処置を~】

とはいえ、これらの方法も万能ではありません。

認知症を発症してから長期間放置すると、脳細胞が壊れてしまったり、恒久的な脳機能不全になってしまったりして、回復が不可能になってしまいます。

医療・介護の現場でも「その人が認知症だと分かった時には、症状が重度で、もはや手遅れだった」というケースも少なくないそうです。

 せっかく治療法があっても、適切な段階で施せなければ、意味がありません。

 だからこそ、根治方法が存在していない今、認知症で苦しむ方を少しでも減らすためには、「早い段階で見つけて、適切な処置を施す」という、「認知症早期発見」が非常に重要」なのです。

 

実際、認知症が早い段階で発見できたことによって、ご家族とのコミュニケーションを改善や、適切な治療が施された結果、認知症が悪化することなく幸せに暮らせたというケースがよく聞かれています。

【これで私は助かった!】“若年性アルツ”早期発見&対応が大事! - 政治・社会 - ZAKZAK

私たち東大認知症政策チームは、現在、この認知症早期発見を行政レベルで整備すべく、「認知症早期発見・早期対応政策」の実現に向けて活動しています。

 

【最後に】 

さて、今回は認知症治療の現状について取り上げましたが、本日7月23日の深夜0時10分から「NHKスペシャル」で認知症治療の最前線について放送されます。

今回の記事で興味を持たれた方は、是非ご覧になってください。

NHKスペシャル|"認知症800万人"時代認知症をくい止めろ~ここまで来た!世界の最前線~

 

_________________________

【参考・出典】

厚生労働省(2014.7.6)「認知症への取り組み

(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/)

厚生労働省(2014.7.6) 「認知症の症状-中核症状と行動・心理症状」

http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/a02.html

認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)

NHK(2014.7.23)「健康ホームページ」

http://www.nhk.or.jp/kenko/n_special/140714.html

 

【私たちの活動】

私たちは2013年の12月より、「ロビー活動※」を通じて、この認知症問題に取り組んでいます。

早期発見の重要性は先ほど述べましたが、具体的な政策や取り組み具合については、各自治体でまちまちであり、決して十分とは言えない状況です。そこに問題意識を持った私たちは、

「ロビー活動によって、早期発見を中心とした包括的な認知症政策を、全国レベルで実現すること」

これをミッションに掲げて活動しています。

現在は、全国レベルでの認知症早期発見政策展開の、前段階として、地方自治体との提携・政策提言を進めています。

 

※「ロビー活動」とは、個人や団体が政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動のことを指します。



このブログでは、認知症に関する記事の他、私たちの活動報告なども行っていきますので、認知症問題や私たちの活動にご興味を持たれた方は、今後も是非、このブログをご覧になってください。