認知症を早くみつける!東大生のブログ

認知症の早期診断・早期対応政策を、地方自治体職員の方や議員の方に提案しております。その他、市民団体・認知症関連団体・企業の方と協働して、認知症啓発活動にも取り組んでいます。政策企画やマニフェスト作成、議会質問、各種啓発活動のご相談はお気軽にinfo@policym.orgまで。NPO法人政策会議が活動母体です。

人生を輝かせるヒントは彼女が教えてくれた ~日本発の認知症ドキュメンタリー映画「僕がジョンと呼ばれるまで」上映会を開催しました~

3月22日(日)、認知症啓発運動として、早稲田商店会・アトム通貨実行委員会との共催で「映画"僕がジョンと呼ばれるまで"上映会」を開催しました。

早稲田・高田馬場の地域住民の方を対象として開催した本企画は、認知症政策の要とも言える「地域ネットワーク」の土台づくりの施策の一つとして、「地域住民に対して、広く認知症への理解を深められるような啓発運動を実施したい」という思いから実現しました。
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(画像引用元:http://www.slow-cinema.com/

 

■第一部 映画「僕がジョンと呼ばれるまで」の上映

企画第一部では、メインコンテンツとして、映画「僕がジョンと呼ばれるまで」を上映しました。(映画『僕がジョンと呼ばれるまで』公式サイト)


映画『僕がジョンと呼ばれるまで』予告編 - YouTube

これは、日本で開発された脳活性化プログラムを元に、アメリカの高齢者介護施設で行われた認知症改善の取り組みを追ったドキュメンタリー映画です。
介護職員であるジョン・ロデマンの視点から、認知症高齢者介護施設の日常風景や、活き活きとした笑顔と自分らしさを取り戻していく高齢者の姿を映し出します。
「2013年アメリカンドキュメンタリー映画祭観客賞」をはじめ、数多くの受賞記録があり、社会的にも高く評価されている映画です。

この映画が優れているのは「認知症の方の現実をしっかりと映しながらも、それをポジティブな目線、演出によって伝えている点」にあります。

私たちの実感として、世間一般的に「認知症の人はかわいそう」、「認知症は記憶がなくなっていく残酷な病気」というような、認知症に対する負のイメージがまだ根強く残っていると感じています。これは間違ったイメージであり、同時に、認知症の方への正しい理解を妨げ、住民を巻き込んだ効果的な政策形成の障害ともなるものです。

その中にあってこの映画では、ポップな音楽をバックに、認知症高齢者の笑顔や介護職員・家族との楽しげなやりとりに強くスポットを当てています。
認知症高齢者とその家族は、笑顔であふれる毎日を送っている」、「たとえ認知症の症状に不自由を強いられていたとしても、適切な治療を行えば、健康で社会的な豊かな生活を送れる」といった事実を、ポジティブな視点・手法で、分かりやすく伝えているのです。

認知症に対するポジティブなイメージ転換というのは、「認知症の方が住みやすい社会を実現する政策の前提」としての認知症啓発活動において、人々の正しい理解に直結する特に重要な視点です。その意味で、住民に対してダイレクトに、認知症の実態とポジティブイメージを伝えることの出来るこの映画は、とても効果的な啓発の形であるとも言えるでしょう。

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■第二部 認知症レクチャー

第二部では、私たち東大認知症政策のチームメンバーによる「認知症レクチャー」を実施しました。
映画の解説やクイズを交えながらの発表の中で、観客の方々から驚きの声が上がるたびに、

・高齢者の5人に一人が認知症になっていること
認知症は完治は難しいが、適切な治療を行えば進行を遅らせることができること。
・何よりも大事なのは、認知症の早期診断・早期対応であること

といった、「是非とも知っておいてもらいたい基本的な事実」でさえ、まだまだ理解が進んでいないということを改めて感じました。

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■最後に ~今後も「草の根的」な啓発活動を~

私たちはあくまで「認知症にまつわる社会問題の"政策的"な解決」に主眼をおいています。
とはいえ、「認知症の方々が住みやすい社会を実現する」という本来の目的に照らせば、「地域住民に対する認知症啓発」は不可欠であり、前述のとおりまだまだ理解が進んでいない事実を鑑みても、力を入れて取り組むべき重要な活動であることは明らかでしょう。
住民一人一人に「認知症に対するしかるべき当事者意識」を持ってもらうためにも、チームとして、政策的手法のみならず、このような「草の根的」な啓発活動にも真摯に取り組んでいきたいと思います。

最後に、今回の上映会の開催にあたって全面的にご協力いただいた早稲田商店会の皆さま、アトム通貨実行委員会の皆さまに、この場を借りて感謝を申し上げます。ありがとうございました。

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