あなたやあなたの家族は認知症? ~認知症の症状とは~
「ここはどこなの?」ーいつも住んでいる自宅なのに…。
「あなた、誰?」ーおばあちゃん、いつも僕を可愛がってくれてたのに…。
慣れ親しんでいる場所なのに、どこにいるか分からなくなってしまう。
一緒に過ごしてきた家族なのに、誰であるのか分からなくなってしまう。
これらの症状は、認知症が重度になると起こる、記憶障害や見当識障害によるものです。
今回は認知症とその症状について、皆さんにお伝えしたいと思います。
■まとめ
- 認知症は、後天的な脳の異常(委縮・血管梗塞など)によって精神機能が減退・消失することであり、知的障害や老化とは異なる。
- 認知症の中核症状には、①記憶障害、②見当識障害、③理解・判断力の障害、④実行機能障害、⑤その他・感情表現の変化、の5つに分けられ、重度になるほど症状が深刻になっていく。
■認知症の定義
そもそも、認知症とはどのような病気をいうのでしょうか?
厚生労働省によると、認知症の定義は以下の通りです。
認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」をいいます。
つまり、後天的原因により生じる知能の障害である点で、知的障害(精神遅滞)とは異なるのです。
ひと口に認知症といっても、アルツハイマー病などの「脳が委縮してしまうもの」や脳血管性認知症のように「脳の血管が詰まったために、周辺の脳細胞が死んでしまうもの」など様々なタイプがありますが、どれも発症原因は明確にはわかっていません。
よく「老化による物忘れと混同して、認知症が疑われる」というケースがあります。厚労省の定義にもあるように、認知症と老化の違いの一つは、日常生活・社会生活に大きく影響があるかどうかという点です。
例えば物忘れ一つとっても、通常の老化の場合は、記憶がなくなるということはなく、物事を覚えたり、思い出したりするのに時間がかかるようになってしまうだけですが、認知症の場合は、脳の衰えが病的であるために、そもそも新しい物事が覚えられなくなったり、記憶そのものが失われたりしてしまうのです。
そのため、上述のような、身近な場所や身近な人が分からなくなるなどの症状が発生し、日常生活に支障が出てくるようになります。
■認知症の症状
では、認知症の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。
認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)に従うと、認知症の中核症状は大きく分けて5つあります。
①記憶障害
- 海馬などの器官が、病的に衰えてしまうことによって、新しいことが記憶できなります。病気が進行すると、蓄積していた記憶まで失われるようになります。失語障害や失行障害が現れる場合もあります。
②見当識障害
時間感覚や方向感覚などが衰えてしまいます。
- 時間感覚の衰えると、長時間待つことや、予定に合わせて準備することができなくなります。症状が進行すると、日付や季節なども分からなくなってしまい、季節外れの服を着たり、今日の日付を何度も聞いたりするようになります。
- 方向感覚が衰えると、近所で迷子になったり、自宅の場所が分からなくなったりしてしまいます。さらに進行すると、徒歩では到底不可能なとても長い距離を、歩いて出かけようとします。(これに関連して、最近では、認知症患者の徘徊・行方不明が問題視されています。)
- また、記憶を失っていく段階になると、今度は自分の年齢や人の生死に関する記憶が失われ、周囲の人間関係が分からなくなります。例えば、年齢感覚が分からなって娘のことを「お母さん」と呼んでしまったり、生死の記憶が曖昧になって亡くなった親族の近況をしつこく尋ねたり、といった症状が見られます。
③理解・判断力の障害
- 考えるスピードが遅くなる、二つ以上のことが重なると上手く処理できなくなる、些細な変化やいつもと違う出来事で混乱しやすくなる、観念的な事柄と、現実的・具体的な事柄が結びつかなくなるなどの症状が現れます。例えば、目に見えないメカニズムが分からなくなるので、自販機や自動改札、ATMを使おうとすると、戸惑ってしまいます。
④実行機能障害
- 計画を立てて活動することができなくなり日常生活が上手く進まなくなります。
⑤その他・感情表現の変化
- 上記の症状によって、周囲からの刺激・情報に対する正しい解釈ができなくなってしまうため、思いがけない感情の反応を示すことが増えます。突然の暴言や暴力が見られる場合もあります。
他にも、上記の症状によって、認知症の本人の元気がなくなり引っ込み思案になる、自信を失って全てが面倒になるなど、心理的・精神的に追い詰められてしまうこともあります。
認知症は、普段の生活に支障をきたしてしまうだけでなく、本人や周囲の人間関係によくない影響を及ぼすこともあるのです。
よくわかる認知症講座「認知症の中核症状を知る」 - YouTube
認知症とその症状について、ご理解いただけたでしょうか?
「では、認知症になってしまった場合、治すことは出来ないのか?」
次回の記事では「認知症治療の現状」についてお伝えしたいと思います。
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私たちは2013年の12月に結成された認知症政策ロビイングチームです。東大生を中心としたメンバー7名で、認知症問題に取り組んでいます。
厚労省の推計では「2025年には認知症の高齢者が700万人になる」と言われています。高齢者の約5人に1人が認知症になるというこの事実からも、認知症というイシューが日本にとって極めて重大であることは疑いようがありません。
一方で、現在、認知症に対する具体的な政策や取り組み状況は各自治体でまちまちであり、決して十分とは言えません。そこに問題意識を持った私たちは、
「ロビイングによって、早期発見を中心とした包括的な認知症政策を、全国レベルで実現すること」
をミッションに掲げて活動しています。
現在は、全国レベルでの認知症政策展開の前段階として、地方自治体・議会への政策提言・政策提携・議会質問サポート等を行っています。
お問い合わせ・ご相談は、合同会社HPをご覧ください。
【参考・出典】
・厚生労働省(2014.7.6)「認知症への取り組み
(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/)
・厚生労働省(2014.7.6) 「認知症の症状-中核症状と行動・心理症状」
(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/a02.html)
・認知症サポーター養成講座標準教材
(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)